
「イシモチの耳石」:やる気とスタミナを養う魚「イシモチ」の薬膳パワー
イシモチの耳石と漢方
イシモチの塩焼きを晩酌用に購入しました。スーパーではあまり見かけませんが、見つけたら買いたくなるお魚です。淡白な白身ですが、ゼラチン質でしっとりしていて、パサつかず身離れの良い美味しい魚です。

イシモチの名前の通り、大きな耳石を持っていることが特徴です。頭を割ると、左右に対になった白くてきれいな耳石を取り出す事が出来ます。イシモチの耳石を集めるのが私の密かな楽しみです。
イシモチの耳石は漢方では魚脳石という名前があり、中耳炎や尿管結石に効果があるとされています。耳石なので耳の疾患や結石に効くだろうという類感呪術的な発想なのだと思います。どの程度の効果があるかは不明ですが・・・。
各務原の内藤記念くすり博物館には岡山藩から徳川幕府へ献上されたイシモチの耳石が収蔵されています。
イシモチは日本ではあまりメジャーではありませんが、中国、韓国では人気の魚です。
中国ではイシモチの浮袋の干物は魚肚と呼ばれ、中国四大乾物としてフカヒレ、ナマコ、アワビに並ぶ高級食材として珍重されるそうです。
韓国ではイシモチの干物をクルビとよび、贈答用にされる高級品だそうです。

生のイシモチはチョギ(助気)、干物をクルビ(屈非)と呼びます。助気は気を養う、屈非は屈しないぞ、負けないぞというような意味です。イシモチは薬膳では腎気を養う食材とされています。腎気とは志(こころざし)、やる気、スタミナなどを意味します。助気、屈非はイシモチの効能をダイレクトに言い表しています。イシモチを食べて腎気を養い(助気、チョギ)、スタミナをつけ、負けないぞ(屈非、クルビ)とやる気を出すといったところでしょうか。

イシモチは大きな浮袋でグーグーと音を出す事も特徴で、英語圏では”Drum Fish”と呼ばれます。ドラムフィッシュの耳石は”Lucky stone”と呼ばれお守りにされることがあるようです。左右の対になった耳石の溝がアルファベットの”J”と”L”に見えるため、“Lucky and Joy”の意味を持つ縁起物になったそうです。
私はイシモチの耳石を“Lucky and Joy”のお守りとして財布に入れています。語呂合わせですが、イシモチの石は「意志」にも通じると思います。また医学的根拠はありませんが、耳石なので車酔いや眩暈防止のお守りにしています。私は二日酔いで頭がクラクラするときにイシモチの耳石をぎゅっと握りしめます。

皆さんもスーパーでイシモチを見つけたら、購入してみてはいかがでしょうか。身を食べて腎気を養い、耳石を取り出してお守りにしてみて下さい。
- 書いた人
岐阜市・加納渡辺病院
外科専門医・漢方専門医 : 渡邊学