「一休みの価値:一休さんの教えと現代医療への適用」
あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。
先日、妻が子供に一休さんの絵本を読んでやっていました。横で聞いていると、おなじみのトンチ話が懐かしく楽しかったです。
ふと、昔見ていたアニメの一休さんが思い出され、
「あわてない、あわてない。一休み、一休み。」
という台詞が蘇ってきました。
昨今はタイパが重視されますが、そんなせわしない時代にこそ大切な言葉かなと思います。
小動物の心臓は早く打ち、早く死にます。大きな動物の心拍はゆっくりで長生きをします。
人間には人間に適したスピードがあり、それ以上急いでもきっと良いことは少ないと思います。
しかしずっとのんびりやれという意味でもありません。忙中に閑ありと言います。
忙しい中でひねり出した休息にこそ価値があります。良く働いた日の仕事終わりの一杯は砂漠のオアシスの如しです。
無駄な力を抜いてあわてることなく流れるような診察をし、時々一休みして良い知恵をしぼる。そんな医療を目指したいと思います。
一休さんは「分け登るふもとの道は多けれど同じ高嶺の月こそ見れ」という言葉も残しています。
宗派に関係なく目指す所は一緒という意味です。この言葉は私の漢方の師匠も良く言っています。
曰く。東洋医学でも西洋医学でも患者さんが治ればどちらのアプローチでもよい。臨機応変に一つの方法に固執しないことが大切だと。
この道を行けば
どうなるものか
危ぶむなかれ
危ぶめば道はなし
踏み出せば
その一足が道となり
その一足が道となる
迷わず行けよ
行けばわかるさ
作者には諸説あるようですが、アントニオ猪木はその著書、猪木詩集「馬鹿になれ」でこの詩を「自分の人生そのものともいえる一休禅師の詩」として紹介しています。
燃える闘魂アントニオ猪木の「元気ですか!! 行くぞ!! 1,2,3,ダー!!」が聞こえてきます。
破天荒なオトナの一休さんの「喝・喝・喝」も聞こえてきそうです。
一休みするつもりが、なんだか休んでいる場合ではないような感じでこのコラムは終了です。
書いた人
岐阜市 加納渡辺病院
外科専門医・漢方専門医 渡邊学