冷え性におすすめの漢方薬と生活習慣
冷え性への漢方
西洋医学より東洋医学が得意な病態に冷え性があります。西洋医学には体を温める処方は少ないですが、東洋医学では多くの処方があります。色々なパターンがあるので思いつくままに簡単に列記してみます。
体の表面が冷えているか、内臓が冷えているかで処方が異なります。体表を温める処方の代表が五積散や葛根湯です。冷え性は冬場のイメージが強いですが、近年では夏場でもエアコンで手足が冷える場合が多く、冷房病に対して良く処方されます。
体表が冷えることによる足腰の冷え、倦怠感、肩こり、頭痛、下痢、腹痛などが改善されます。胃腸を温めて、内部から冷えを改善する処方の代表が人参湯や大建中湯です。朝鮮人参や乾姜(蒸して乾燥させたショウガ)、山椒などが含まれています。
生姜、山椒は四川風麻婆豆腐を連想して頂くと、お腹が温まるのが想像できると思います。人参湯は心窩部の張り感、大建中湯はおへそ回りの冷感を目標に処方します。冷たいかき氷を食べたときの様な頭痛、腹痛、下痢、倦怠感など症状が改善します。
気血水の異常も冷えを起こします。気の異常には補気剤の六君子湯や補中益気湯が有名です。胃腸の消化吸収を改善し、熱量の産生を高める処方です。食後のだるさや眠気が良くある症状です。
水の異常には苓姜朮甘湯や当帰芍薬散が使用されます。水が冷えると氷になるように、むくみがベースにある患者には冷えが合併しやすいです。
古典の条文には苓姜朮甘湯は「水中でまるで重りをつけたように足腰が重い状態に使用する」と記載されています。水はけを良くすることでだるさ、冷えが改善されます。
血の異常に対しては桂枝茯苓丸が有名です。血流が悪いと熱や栄養が末梢に巡らず、冷えや痛みの原因となります。女性においては子宮筋腫や内膜症で下腹部の血流が悪化する場合の冷え性や腹痛に有効です。
トリカブトの毒を抜くと、附子という生薬となります。強く体を温める効果と鎮痛作用があります。附子の含まれる処方に牛車腎気丸や真武湯があります。これらの処方は老化に伴う代謝の低下からくる冷えに処方されます。
しかし附子の含有量がそれほど多くないので、効果に乏しい場合は附子末を追加して効果を増強させます。
附子を使用することで固まった氷が解けるように体が温まり、おしっこが良く出るようになり、冷え・むくみが改善する場合が多いです。
変わったところで、交感神経の過緊張からくる末梢の冷えもあります。緊張したときに手足が冷たくなり、手汗を良くかくような症状です。これに対しては四逆散が有効です。
ストレスからくる体の過緊張をほぐす処方です。肩こりや胃痛、脇腹のツッパリなどにも有効です。
日頃の生活でも
漢方薬内服の他にも冷やさない生活の工夫が必要です。冷えを誘発するような食物をとらないこと。甘いもの、小麦製品は体を冷やす作用があります。
また野菜、果物類にも体を冷やしやすい食材があります。夏野菜は体を冷やす方向に働きます。トマトやゴーヤ、瓜類が代表です。
南国でとれる果物も体を冷やしやすいと言われます。バナナやスイカなどです。冷え性の人はこれらの食材を取りすぎないことが大切です。
旬のものを地産地消するという姿勢も大切なのでしょう。服装も大事です。首回り、手首、足首を冷やさないこと。外出先で羽織れるような上着を持参することなど。夏場でもシャワーですまさずに入浴をすることもよいかもしれません。