水と火は交わるのか? 映画『マイ・エレメント』を東洋思想で考える
ディズニー映画マイ・エレメントを子供と見ました。
映画は水と火の正反対の属性を持つ男女が種族、親子間やお互いの価値観の違いなどを乗り越えて結ばれるストーリーで、Superflyのエンディング曲「やさしい気持ちで」がグッときました。
この映画を題材に東洋思想の五行説と易経について少し考えて見ようと思います。
五行説
五行(木火土金水)には相生、相剋の関係があります。
相生は相手を生み出す相性の良い関係で、木が燃えて火を生じ、火が消えて灰となり土を生じ、土の中から金属が生じ、金属には水滴がつき、水は木を育むという流れです。
相剋は相手を抑制する関係で、火は金属を溶かし、金属は木を切り、木は土の養分を吸い上げ、土は水をせき止め、水は火を消すという流れです。
激しくてドライな火と優しくてウエットな水。五行説では相剋の関係で相性は余り良くはありません。
お互いの違いに戸惑うことの多い関係であると思います。
しかし自分にないものを持つ相手が魅力的に見えることも事実。相剋の関係を打開する一つの方法は火と水のどちらとも仲良く出来る(相生関係の)木(風、雷)の要素に間に入ってもらうことです。
映画でも二人の間に風の上司が登場していました。旅行や新しい事も木の事象なので、映画のエンディングの様に一緒に旅をしたり、新しい何かを始めるのも良いかもしれません。
また木(風)は軽やかで柔和な態度を示します。お互いに執着せず軽やかに「やさしい気持ちで」歩み寄る姿勢が何よりも大切かもしれません。
易経
易経において水と火の交わりを表す卦には水火既済と火水未済の二つがあります。64卦中63番,64番に配置されたトリ、大トリの位置を占める重要な卦です。
水火既済
水が上で火が下にある状態で、水は優しく滴り落ち、火は激しく燃え上がります。
水と火がお互いに向き合い、交わり、完全に調和した象です。
済は川を渡るの意味で、既済とは川を渡り切った、つまり一線を越えて、完成、成就した状態をあらわします。
しかし絶頂の後には衰退が忍び寄ってきます。今ある幸せを維持するために、行動を慎重に、欲張らず、警戒し備え、奢らず初心を忘れないことの大切さを説いています。
水と火の二人が抱き合ったシーンは既済の瞬間であったと思います。
火水未済
火が上で水が下にある状態で、火は上へ燃え上がり、水は下に流れ落ちます。
火と水がお互いに反対方向を向き、交わらないため、調和や完成はありません。
しかしそれぞれに自分にあった方向に自由に進む形でもあります。未済は未熟、未完成ではあるが、それぞれの適正に応じた伸びしろは無限大の状態と言えます。
困難を乗り越えて未済を既済に近づけるためには、自分の能力を把握して慎重に行動をすること、石の上にも3年の努力、楽しみに溺れず節度を持つことが大切と記されています。
映画ではお父さんが故郷を飛び出して、店を構えて希望に燃えた時期が未済の状態でしょうか。
乾坤の天地創造から始まる易経は63番の水火既済の次に64番の火水未済を置いて終わります。
完成の既済ではなく、未完成の未済で終わらせることで、物事に完成や終わりはなく循環して続いていくことを示しています。
既済は水の下に火がある形で海に夕日が沈む様子を、未済は水の上に火がある形で海から朝日が昇る様子をイメージできます。
既済から未済の流れは、夕日が沈んで平和な夜が訪れた後、また朝日が上って希望に満ちた新たな一日が始まる循環とも捉えられます。
あるいは成熟した男女が交わりあい絶頂を迎えて既済となり、次の世代の男女が生まれて新たな未済の物語が始まるとも表現できます。
乾坤から始まり既済、未済に達した物語は螺旋状に循環をして、また新たな乾坤の物語が始まり連綿と続いて行きます。
映画『マイ・エレメント』から東洋思想を少し勉強してみました。
映画は西洋式の四元素で構成されているので、これを機に西洋式の四元素思想や占星術なども勉強してみようかなと思いました。