
しゃっくりに悩むあなたへ。漢方や鍼灸で効果的に治療する方法とは?
しゃっくり(吃逆)の
漢方とツボ
〜 柿のヘタから「奥の手」まで 〜
しゃっくりを止めて欲しいと言う患者さんが年に数人来院されます。
しかし、しゃっくりが命に関わる事は少ないので、患者さんはあまり親身になってもらえず、制吐剤や胃薬を処方されてうやむやになる事が多いのではないでしょうか。
私もしゃっくりの治療にはあまり積極的ではありませんでしたが、漢方を勉強してから少し手応えを感じています。
漢方薬では
私がしゃっくりの漢方治療に興味を持つようになったきっかけは、しゃっくりが止まらない腹部手術後の患者さんに茯苓飲合半夏厚朴湯が良く効いた事です。
茯苓飲合半夏厚朴湯は胃腸の水はけを良くする茯苓飲と消化管のガスの通りを良くする半夏厚朴湯を合わせた薬で、外科領域では上部消化管手術後の通過障害によく使われます。
上記の患者さんも内服開始後、胃のむかつきが改善してしゃっくりが減少しました。この経験以降しゃっくりに漢方薬を時々処方しています。
民間薬では柿の蔕(ヘタ)がしゃっくりに有効とされ、市販薬もあります。柿蔕湯という処方があり、しゃっくりに6割程度の有効率と報告されています1)。
また抗がん剤治療中のしゃっくりに有効という報告もあります2)。私は処方したことがありませんが、しゃっくりが出た時に家族で試してみようと家にストックをしています。
鍼灸では
漢方薬は処方して、効くまでのタイムラグがありますが、鍼灸は速効性があります。最近経験した症例を提示します。
とにかく早くしゃっくりを止めてくれと訴えます。
さてどうしたものかと、お腹をみてみるとみぞおちの辺りがぽこっと張っています。胃から先にうまく流れていかないため逆流してしゃっくりが出ているのでしょう。
患者と相談して針をしてみることにしました。胸部からみぞおちにかけての流れをよくする膻中、中脘に針をするとお腹がぐるぐる鳴るのが分かりました。
しばらくするとしゃっくりの回数が半分くらいになっています。今度はうつ伏せにして膈兪に針をします。横隔膜の痙攣を抑える働きがあります。
患者さんは「針って効くのですね」と驚きます。私は当然の事の様な顔をしながら内心ホッとします。仕上げに胃を冷やさない様に指導して帰宅としました。
上記のツボでしゃっくりが止まらない時はどうするのでしょうか。
実は奥の手がもう一つあります。これも実体験を紹介しましょう。
我が家の小学生の息子がしゃっくりが止まらないと騒いでいました。兄弟がびっくりさせたり、息止めをさせたりしていますが、ダメなようです。
そこにお父さんが近づき、「しゃっくり止めて欲しい?」「ちょっと痛いけど頑張れる?」と聞くと、息子は「うん」と答えます。
お父さんは「じゃあいくよ」と言って、おもむろに息子の乳首をぎゅっとつねります。息子は『ぎゃーっ!!』と笑いながら叫びますが、気がつくとしゃっくりが止まっています。
これはいたずらではありません。
実は乳首の下にある乳根(にゅうこん)というツボにはしゃっくりを止める効能があるのです。男性は左、女性は右が有効とされています。
胃経が乳首を通過しているのでしゃっくりに効くのか、ただ痛くてびっくりして止まるのかはよく分かりませんが・・・。
自験例では針刺激でしゃっくりが幸運なことにすぐに止まりましたが、2-3時間のタイムラグがあってから止まる場合も多いようです。
また針でなく灸も有効で、ツボは膻中、巨闕、上脘、中脘、至陽、霊台、膈兪、内関、足三里、太衝なども使用される様です3)。
しゃっくりの漢方とツボについてまとめてみました。
干し柿をかじりながら、「何故柿のヘタを薬にしようと思ったのだろうか?」と
昔の人の発想に脱帽しながらこのコラムを書きました。
参考文献
- 1)角藤裕、他.吃逆に対する柿蔕湯の効果.日東医誌.69(2), 161-167, 2018.
- 2)大野凜太郎、他.がん化学療法における吃逆に対する柿蔕煎液の有効性.医療薬学.46(5) 266―271 (2020).
- 3)西田皓一.東洋医学見聞録 上巻.医道の日本社.1999.

