「良薬は口に苦し」の意味:忠言と治療のバランス
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「良薬は口に苦し」と言いますが・・・。
「良薬は口に苦し」という孔子の有名な言葉があります。この言葉は以下のように続きます。
「良薬は口に苦けれども病に利あり、忠言は耳に逆らえども行いに利あり」
(良い薬は苦いけれど病気に良く効く。良い忠告は耳に痛いけれど行いを正すのには大切。)
日々の臨床において、色々と厳しいご意見をいただく事もあります。その際はこの格言を思い出して、忠言をグイっと飲み干して、襟を正します。
心の中では、昔見た青汁のCMのように「まずい!もう一杯!!」と叫んで、精一杯強がってみます。
ちなみに苦い漢方薬の代表は黄連解毒湯、竜胆瀉肝湯でいずれも実証(体力がある人)向けの処方です。
漢方薬には苦い味の他にも色々な味があります。甘口の甘麦大棗湯や小建中湯、酸っぱい小青竜湯、ピリッと辛い大建中湯などが有名です。
医者は患者の病状をみて薬を使い分けます。苦い薬が常に良薬であるわけではありません。体力のある実証患者には苦い薬もよいですが、弱った虚証患者には合いません。この場合の良薬は甘い薬で元気を補うことなのです。
忠言についても同じことが言えると思います。多少厳しくしても大丈夫な時と、優しく励ました方が良い場合があります。
私自身も疲れたり、自信を失いかけたりする時があります。そんな時には患者さんからの「ありがとう」の感謝の言葉が心に染みて、もうひと頑張りするエネルギーとなります。
実証で余力のある時は「良薬は口に苦し、忠言は耳に逆らう」で頑張って、虚証で余裕のない時は「良薬は口に甘し、忠言は耳に従う」で立て直す。
薬も忠言もその時々の状況で塩梅よく腑に落ちるものを取ることが大切だと思います。
書いた人
岐阜市・加納渡辺病院
外科専門医・漢方専門医 渡邊学