
お灸の「灸」の漢字の成り立ちとは?「久」の意外な意味と由来を解説
お灸(久)の漢字の成り立ち
灸の漢字を分解すると、灸=久+火 となります。
灸の古字は久であったとされます。
久の字は古代の漢字辞典、説文解字に以下のように説明されています。

「後ろよりこれを灸す 人の兩脛(すね)の後に距(けづめ)あるに象(かたど)るなり」
意訳すると、
「横たわった病人の背後からお灸をする様子。脛(すね)の後ろに蹴爪があるように見えたのを象った。」となります。蹴爪は鶏の踵にある、後ろ向きに生える爪のことです。

昔のお灸は今の台座灸とは違い、火箸で直接焼いていました。久の字の「ク」は横たわった病人で、下の棒「乀」はお灸をするアツアツの火箸だと思います。トングを火箸に見立てて、我が家の息子で再現してみました。
お灸をしたツボはどこでしょうか?
「脛(すね)の後ろに蹴爪があるように見える」とあるので、脛(すね)にある最も有名なツボ、足三里だったのかもしれません。足三里は5000年前のミイラ、アイスマンにも鍼灸をした形跡がある由緒あるツボです。
どうです?「久」の字が病人の足三里に火箸でお灸をすえる様子で、その形が鶏の蹴爪に見えませんか?

久は長いの意味を持ちます。
お灸(久)をすることで長く健康でいることができることから、久が長いの意味となったのかもしれません。
もちろん、お灸をしても治り難い病気はありました。「疒(やまいだれ)」+「久」で「疚:長患い」となります。
さらに悪くなるとお灸をしたまま動けず、木でできた箱、棺桶に入ることになります。その状態を表した漢字が「柩:ひつぎ」となります。

疚(長患い)で柩(ひつぎ)に入らなくて済むように、早い段階からお灸でケアをして、病気に対する持久力、耐久力がつくと良いですね。
灸は久です。長くコツコツ続けることが大切です。
お灸を続けて長生久視(不老長寿の意味)を目指しましょう。
- 書いた人
岐阜市・加納渡辺病院
外科専門医・漢方専門医 : 渡邊学