
易経『天水訟』に学ぶ争いの解決法
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言葉の処方箋:天水訟
易経に天水訟という訴訟、トラブルへの対処法を説いた卦があります。

「訴訟の時は真実を主張しても通らない。慎重に中道を保つのが吉。自分の要求を押し通すと凶。公平な大人に仲裁を頼むのが良い。危険を冒してはいけない。」と説いています。また「争いで得たものはすぐに失う」とも言っています。
争いから得られるものは少なく、たとえ勝ったとしても危険を孕むということの様です。

天水訟の卦をもう少し良く見てみると、
乾天(☰)の相手は剛健で強権な態度。坎水(☵)の自分は危険で険悪な状態。健と険がぶつかり合い、どちらも剣を納める気配がない、一触即発の様子をあらわしています。
こんな時はどうすれば良いのでしょうか。
「剣をさやに納めなさい。剣を取るものは剣によって滅ぶ。」という聖書の箴言があります。
「弱者は赦すことができない。赦しは強者の証。」というガンジーの言葉もあります。

ぐっとこらえて剣を降ろすことができた方が真の勝者と信じて、対立から和解の道を探りましょう。
坎水(☵)の自分が剣(険)を納めれば坤地(☷)となります。踏まれても文句を言わない母なる大地であり、慈悲、慈愛の象徴です。
乾天(☰)の相手が剣(健)を納めれば離火(☲)となります。美麗な火であり、文明や知性、聡明さの象徴です。
離火(☲)と坤地(☷)で火地晋となります。
火地晋は日の出の象徴であり、新たな関係が進んでいくことを意味します。
世の中の争いが綺麗事で解決するわけではありませんが、抑止力にはなると思います。
天水訟の両者が剣を納めて火地晋となり、新たな関係が進むことを期待してこのコラムを書きました。
このコラムを書いた人
岐阜市・加納渡辺病院
外科専門医・漢方専門医 : 渡邊学



