
アンパンマンから学ぶこと
2025年の朝ドラはアンパンマンの作者、やなせたかし先生がモデルです。
「やなせたかし 明日をひらく言葉 PHP研究所 編」を拝読しました。アンパンマン誕生の経緯、戦争体験や正義の考え方、生きる喜びなどに関してとても良いことが書いてありました。医療にも役に立つヒントがあり、新年度のスピーチに使わせて頂くことにしました。今回のコラムではその原稿を載せてみます。
愛と献身 人生はよろこばせごっこ
「なんのために生まれて なにをして生きるのか」の問いかけに、やなせ先生は「人生はよろこばせごっこ」と答えています。また「逆転しない正義は献身と愛だ」とも言っています。
アンパンマンにとって困った人に顔を分け与えることは苦痛ではなく喜びなのです。自分の身を削って困っている患者さんを助ける医療者はアンパンマンに近いと言えます。アンパンマンの様に患者さんを助けることを義務や仕事ではなく、喜びや楽しみと感じることができれば見える景色が変わると思います。
現実はアンパンのように甘くはありませんが、医療者がアンパンマンを意識して笑顔と喜びで患者さんに接することで、患者さんも笑顔になり、「よろこばせごっこ」の好循環に少しでも近づくことができたらうれしいと思います。

老害なんてなんのその
やなせ先生がアンパンマンを書き始めたのが50歳の時で、アニメ化されたのが69歳の時。そして90歳を超えても現役で活躍されました。
老害や早期リタイヤが取りざたされて久しいですが、やなせ先生はそれとは真逆の大器晩成、生涯現役を達成されました。良い老い方のお手本を示して下さったと思います。何にでも挑戦し、好きなことを見つけてコツコツと継続すれば、いずれ自分の順番が回ってくると仰っています。
また絶望しても希望を信じ、笑って楽しむ気持ちがあれば心を若々しく保つことができるとも言っています。面白く無き世を面白くして、人生を楽しめるかは心持次第、ネバーギブアップです。

アンパンマンとバイキンマンはコインの表と裏
誰の心にも善と悪が共存しています。アンパンマンとバイキンマンの様に時々けんかをしますが、まずまずうまくやっています。自分の負の感情を過度に恐れて徹底的に排除する必要はありません。
嫌な気持ちがわき上がった時は、ハヒフヘホーとバイキンマンのとぼけた感じをイメージしてみてください。禍々しさを和らげる効果があると思います。アーンパンチ、バイバイキーンと唱えて上手にやり過ごしましょう。

拳を握りしめろ
アンパンマンのキャラクターの手はみんなグーです。その理由についてやなせ先生は、「悲しいときやつらいとき、涙がこぼれてきても、手のひらで拭くのでは、弱い心を追い出せない。
しっかり手を握り、拳で涙を拭かなければダメだ。」と書いておられます。のほほんとしたアンパンマンのキャラクターたちも結構苦労しているのです。

2025年の私の目標はアンパンマンです。足の引っ張り合いが目立つ昨今ですが、皆さんは身近な人と「よろこばせあいっこ」を心掛けてみてください。やなせ先生は「海に一滴の淡水を注ぐようなことでも、百人いれば百滴になる」といっています。一人ひとりの力は小さくてもそれが波及し広がれば大きな影響力となり世の中が救われると信じます。
書いた人
岐阜市・加納渡辺病院
外科専門医・漢方専門医 渡邊学