
2025年今年の漢字「熊」と漢方|万能薬「熊胆(くまのい)」から現代のウルソまで
熊と漢方
2025年の今年の漢字に「熊」が選出されました。今回のコラムでは漢方の視点から熊について記載をしてみます。

熊の胆嚢は「くまのい」と呼ばれ、高貴薬として古くから珍重されてきました。聖武天皇に献上された熊胆が正倉院に収蔵されています。
熊胆の効能は鎮痛、利胆、強心、鎮静、解熱などとされ、その貴重さから万能薬的な位置づけであったようです。

江戸時代の医師、後藤艮山が熊胆を使用したことで有名です。病気の治療には気の巡りをよくすることが重要と主張し、食養、運動、湯治、灸に加えて熊胆を使用したことから湯熊灸庵(ゆのくまきゅうあん)というあだ名が付きました。
熊胆は貴重で高価な生薬のため多くの偽物が出回ったそうです。松田邦夫先生の著書「症例による漢方治療の実際 」に熊胆で二日酔いを治した経験が記されています。そこに、一匹の熊が捕獲されると、数日後に四個の熊胆が市場に出回るという記載がありました。他の動物の胆嚢を用いた偽物が多く作られたのです。

現在では熊胆の主成分であるウルソデオキシコール酸が化学合成されており、熊を捕獲せずとも、安く手に入れることができます。熊胆の効能に着想を得て、日本人により製薬化されました。ウルソという名前の薬で利胆、肝保護を目的に処方されます。ウルソはラテン語で熊を意味するウルススからの命名だそうです。
ウルソを西洋薬ではなく人工熊胆として漢方的に解釈すると、疏肝理気、清熱解毒薬として使用目標が拡大するかもしれません。上手に使うことができれば、湯熊灸庵ではないですが、ウルソ亭○○とあだ名がつくかもしれません。
熊被害の多かった2025年は9000頭以上の熊が捕獲されています。
これらの熊胆がどのように流通したか興味がある所です。日本と同様に熊胆を珍重する韓国では熊は絶滅状態であり、数を増やす取り組みがされているようです。
日本においても九州では「くまモン」はいますが、野生の熊は絶滅しています。増えすぎても捕りすぎてもダメ。難しいですね。

岐阜市・加納渡辺病院
外科専門医・漢方専門医 : 渡邊学



