
Barで薬膳 |杏仁とアマレットで楽しむ心と体のセルフケア
Barで薬膳 杏仁とアマレット
薬膳の知識を肴に美味しくお酒を飲むコラム。
今回は杏仁とアマレットを取り上げてみます。杏仁は杏の種の仁で、杏仁豆腐でおなじみです。アマレットというイタリア産のリキュールに杏仁が配合されています。
アマレットを牛乳で割ったアマレットミルクはアルコールの入った大人の杏仁豆腐という印象で、甘口で女性におすすめです。
またアマレットとウイスキーのカクテルであるゴットファーザーも有名です。甘く香りが良く、度数が強いゴッドファーザーは女たらしのイタリアンマフィアを彷彿とさせます。

漢方では杏仁は痰を切り咳を止める(鎮咳去痰)作用があり、また油分を含むため便通をつける(潤腸通便)作用もあるとされます。
風邪や気管支炎に処方される麻黄湯や麻杏甘石湯に配合されます。麻杏甘石湯は味が淡白で子供でも飲みやすい処方です。
便秘に処方される麻子仁丸、潤腸湯にも配合されています。こちらは老人のコロコロした便秘に効果的です。
杏林高手
東洋医学の名医を杏林高手と呼びます。これは三国時代の名医、董奉の故事に由来します。
董奉は貧しい病人には薬代のかわりとして裏山に杏の木を植えさせました。多くの患者を助け、数年で見事な杏の林が出来たそうです。

董奉は実った杏を穀物と交換し、その穀物を無償で配布し飢えた人々を救済しました。董奉は済生救民のお手本なのです。
杏林大学の由来でもあります。
杏の花
杏は春先にピンク色のきれいな花を咲かせます。

杏、梅、桜、アーモンドはバラ科に属す親戚で、皆ピンクのよく似た花を咲かせます。
薬効にも共通点があり、咳を止める作用があるようです。また意外に知られていませんが、喉にある扁桃腺の扁桃はアーモンドの中国名です。
ストレスで喉がつかえるヒステリー球を漢方では梅核気とよびます。
効能や命名から見て、バラ科の植物は喉の辺りに関連が深い様です。これは宣肺理気という気を巡らす作用と関係が深いと言い換えてもよいと思います。
チェリープラム
バッチフラワーのレメディーにチェリープラムがあります。
イギリスの桜で生垣などに植えられるそうです。
恐怖による緊張、パニックを緩和して自制心を取り戻す作用を持ち、レスキューレメディーにも組み込まれています。温かい春をイメージさせるピンク色のチェリープラムが恐怖で凍った心を温め、リラックスをさせるという発想だと思います。

漢方風に表現すると杏の親戚のチェリープラムに気逆(パニック)を理気降逆(気を巡らせ、降ろす)する作用があるという事でしょうか。
潤いが足りず、喉の調子が悪く、便秘気味の時はナイトキャップにアマレットミルクで潤いをチャージすると良いかもしれません。杏仁の良い香りを嗅ぎ、さらにピンク色の花を思い浮かべると、気が巡り、不安感や恐怖心も和らぐと思います。
貫禄負けしてしまいますが、私は時々ゴッドファーザーを頼みます。杏林高手の足元にも及びませんが少しでも近づけたらと思い、満開の杏林を思い浮かべながら、ちびちびとすすります。
岐阜市・加納渡辺病院
外科専門医・漢方専門医 : 渡邊学