令和版 葛根湯医者:風邪、頭痛、肩こりから二日酔いまで、『葛根湯をどうぞ』
令和版 葛根湯医者
葛根湯は日本で一番有名な漢方薬の一つです。
江戸時代にも良く使われていたようで、どんな病気にも葛根湯を出す藪医者を揶揄した「葛根湯医者」という古典落語があります。
風邪にも、腹痛にも、頭痛にも、何にでも葛根湯の一点張り。しまいには患者の付き添いにも「お疲れでしょう」と葛根湯を勧める始末。
かく言う私も葛根湯をよく処方する「葛根湯医者」であります。はたして私は藪医者や否や。
令和版 葛根湯医者の診察風景をチラリとお見せします。
風邪をひいてゾクゾクします。
『葛根湯をどうぞ。』熱いお湯で汗が出るまで何回か飲んで下さい。お粥をすすって温かくして早く寝ると良いですよ。
喉が痛いです。目が赤く、目ヤニがでます。
『葛根湯をどうぞ。』炎症を抑える桔梗石膏を足しておきますね。
黄色い鼻水が続きます。副鼻腔炎みたいです。
『葛根湯をどうぞ。』鼻の通りに良い葛根湯加川芎辛夷にしておきますね。
歯が痛いです。
『葛根湯をどうぞ。』下の歯痛は合谷の針、上の歯痛は内庭の針、歯槽膿漏は女膝の灸がよいですよ。それよりもまず歯医者に行きましょう。
肩こり、頭痛がひどいです。
『葛根湯をどうぞ。』物理療法も効きます。トリガー注射、針、灸などご希望があれば対応します。
母乳の出が悪いんです。
『葛根湯をどうぞ。』水分をしっかりとりましょう。ヨモギ茶、タンポポ茶もお乳の出をよくしますよ。背中にある天宗というツボもおすすめなので、家族のだれかに揉んでもらってください。
おねしょで困っています。
『葛根湯をどうぞ。』おしっこを溜める作用があります。覚醒作用もあるので寝ぼけておしっこをしてしまう場合に有効といわれます。
蕁麻疹がでました。
『葛根湯をどうぞ。』浮腫みをとる五苓散も足しておきます。青魚をたべた?魚毒を解く香蘇散も良いかもしれませんね。かゆみ止めのツボ、曲池、肩グウを押してみてください。
冷房で冷えて体調がわるいです。
『葛根湯をどうぞ。』普段の食事で生野菜、果物、スムージー、アイス、氷、甘いお菓子などの体を冷やす陰性食品を食べ過ぎないようにしましょう。
帯状疱疹の神経痛が引きません。
『葛根湯をどうぞ。』鎮痛作用の増強された葛根湯加朮附湯にしておきますね。
仕事が大変で首が回りません。
『葛根湯をどうぞ。』首がゆるみます。エフェドリンで少しシャッキリしますよ。補中益気湯も出しておくので何とかやりきって、ゆっくり休んで下さい。
二日酔いで頭が痛くてボーっとします。
『葛根湯をどうぞ。』シャキッとしなさい。葛(特に花)は昔から二日酔いに良いと言われています。「かのわたコラム」の二日酔いの漢方も参考にして乗り切ってください。(注:胃の調子が悪い時はお勧めしません)
ペットの犬が風邪気味で元気がなくて。
『葛根湯をどうぞ。』ペットにも漢方効きますよ。
悪い霊がついて背中が重いです。
『・・・・。葛根湯をどうぞ。』ストレスや怖い夢を抑える桂枝加竜骨牡蛎湯を処方しておきます。あとは、お祓い??かな??
一番最後は冗談ですが、こんな感じで葛根湯を使っています。
落語は笑い話ですが、思いもかけない意外な病気にも葛根湯は効くのです。
そして、その際は上述のようなひと手間を加えるとぐっと効果があがります。
もちろん、今回記載しなかった西洋薬との併用も有効です。
葛根湯は誰が使っても、いい加減に使っても良く効く完成された処方です。しかしそこに手間を加えて効果の差をつけるのが漢方専門医の腕の見せ所だと思って頑張っています。
令和版 葛根湯医者のお話でした。
書いた人
岐阜市・加納渡辺病院
外科専門医・漢方専門医 渡邊学