春の薬膳 カレーで体と心を元気に!
春の薬膳 カレーで体と心を元気に!
春は芽吹きの季節です。少しずつ温かくなる春の陽気を上手に取り込みながら、冬に溜め込んだものを少しずつ脱ぎ捨てて、ストレスをためずにのびのびと過ごすことが大切な季節です。
東洋医学ではこれらの働きを肝が司るとされています。この発散が上手くいかないと五月病などとして不調が表れてきます。
菜の花や山菜、貝類など春に美味しくて体に良いとされる食べ物が色々ありますが、私の一押しの春の食べ物はカレーです。
カレー
カレーのスパイス
カレーの黄色のもとになるスパイスのターメリックは日本ではウコン、漢方では姜黄(きょうおう)と呼ばれており肝に働きかけるとされています。
体を温めて陽気を高め(辛温)、血流を改善してデトックスし(活血化瘀)、気を巡らしてストレスの発散に役立つため(疎肝理気)、春にうってつけだと思います。
ターメリックは世界でも良く研究されており、癌、高コレステロール血症などの心血管病、認知症などの神経疾患、リウマチや喘息などの炎症、アレルギー性疾患などに有効であると報告されています(1)。
変わったところでは運動後の筋肉痛、肉体疲労にも良いとのこと(2)。また春に多い花粉症やうつ病などのメンタルの不調にも良いようです(3)。
カレーを良く食べるインドでは認知症が少ないそうですし、インド人が数字に強く、明るく元気な人が多いのもターメリックのおかげかもしれませんね。
カレーの具にはお肉
カレーの具は何が良いのでしょうか。お肉は全般に気力と体力を補うとされています。体が疲れているときは胃腸にやさしい鶏肉がよいと思います。
鶏肉に含まれるイミダペプチドに抗疲労効果があるとされています。長距離を飛んでも疲れない渡り鳥をイメージしてエネルギーを頂きましょう。
心と体に潤いがなく、イライラしたりカサカサする時は豚肉が良いです。豚肉には潤いを与える効果があるとされています。
水浴びが大好きで社交的な、すべすべのピンクの肌の豚の力を頂きましょう。ただし食べ過ぎると逆にテカテカになって湿疹ができることもあります。
牛肉は血を補い筋肉を強くしてスタミナをアップさせます。もう少し頑張りたい時や、体力をつけたい時に良いでしょう。寡黙で力持ちで良く働く牛のイメージでしょうか。
冷え症で体を温めたい時は羊肉がよいです。Lカルニチンが代謝を上げて体を温めます。
漢方の古典の金匱要略(きんきようりゃく)には産後の体力低下に当帰生姜羊肉湯というショウガと羊のスープの様な処方が記載されています。
モコモコした毛皮に覆われ、群れで行動する羊は確かに温まりそうなイメージですよね。
ただし食べ過ぎると体質によっては血圧が上がったりのぼせることがあります。
魚介類もよいです。エビやイカ、貝類などは漢方では腎を補うとされており、現代風に言うとアンチエイジングの効能があるとされています。
体調や気分によって色々試して見ると面白いと思います。
野菜も
野菜についてはどうでしょうか。日本式カレーの定番の人参は血を補い、ジャガイモは気を補い、玉ねぎは気と血を巡らせるといわれるので、相乗効果で良いトリオなのだと思います。
少し胃腸が弱ってあっさり行きたい時は胃腸に働きかける大根もカレーに相性が良くてカレーの具として私は好きです。またアルゴビというジャガイモとカリフラワーのカレーもインドでは定番です。
カリフラワーは日本ではやや影が薄いですが、筋トレが好きな人に人気の高いブロッコリーの親戚で栄養価が高く、カレー味によく合います。
冬から春が旬で、最近では色々な色の種類も出回っていて面白いです。
またカレー粉はマヨネーズやドレッシングによく合うので、春キャベツのコールスローやポテトサラダにカレー粉をトッピングするのも美味しくカレーを取り入れる良い方法だと思います。
カレーに合う飲み物は
最後にカレーに合う飲み物について。私はインドカレー屋のチャイが好きです。
紅茶には体を温め、インフルエンザを予防する効能があるとされています(4)。
またシナモンや生姜にも体を温める作用があり、風邪の漢方薬の桂枝湯や葛根湯にも配合されています。
まだ完全に気温が暖かくなっておらず風邪も流行る春には、ホットチャイが陽気を高めて風邪予防にもなりおすすめです。
チャイを家庭でも取り入れたいと思っていましたが、自分でスパイスから煮出すのはかなりハードルが高いと感じていました。
しかしスーパーのスパイスコーナーでチャイスパイスという小瓶を見つけて解決しました。
生姜紅茶のティーバックでミルクティーを作って、このスパイスを振りかけると結構おいしいチャイができるので、ここのところ気に入って良く飲んでいます。
ピリ辛のカレーで元気をつけて、のびのびと新しいことにチャレンジできる春になることを願っています。
1. Mohamed T. El-Saadony et al. Impacts of turmeric and its principal bioactive curcumin on human health: Pharmaceutical, medicinal, and food applications: A comprehensive review. Front Nutr. 2022; 9.
2. Di Pierro F, et al. A naturally-inspired, curcumin-based lecithin formulation (Meriva formulated as the finished product Algocur) alleviates the osteo-muscular pain conditions in rugby players. Eur Rev Med Pharm Sci. (2017) 21:4935–40.
3. Sanmukhani J, et al. Efficacy and safety of curcumin in major depressive disorder: a randomized controlled trial. Phytother Res. (2014) 28:579–85.
4. 三井農林 お茶科学研究所. “紅茶のインフルエンザウイルス感染阻止力の研究について”. https://www.ochalabo.com/power/btp.html (参照 2023/02/28)