肥満症の漢方 ~きれいに健康的に減量することを目標に~
肥満症への漢方
防風通聖散が有名です。
これは体内に蓄積した病邪を汗、尿、便から排出させる瀉剤、つまりデトックスの処方です。体質に合うととても良く効き、体が軽くなり、体調が良くなる方が多いです。
痩せる漢方薬として世間では認識をされていますが、肝機能異常を起こしやすい生薬や下剤が含まれているため、安易に長期間投与することは慎まねばなりません。特に肝機能に関しては適切な採血フォローが必要です。
構成生薬が18味とやや複雑な処方ですので、効果が分散する傾向があります。(構成生薬が少ないとシャープな作用、多いとマイルドな作用となる傾向があります。)
作用にメリハリをつけて、より効果を上げるための工夫は大切です。清熱(高血圧やイライラ)、発表(湿疹、喘息)、利水(むくみ)、攻下(便秘)、駆お血(巷でいうドロドロ血液)等のどの方向の作用を強めるかを診察して薬剤を追加、組み合わせます。
併用薬は漢方薬に限定はされません。西洋薬の降圧薬、糖尿病治療薬、脂質異常症治療薬などの中には漢方で言う瀉剤に類する処方が多いので、これらの併用も理にかなっていると考えます。
原因は様々
体重を気にされる女性の多くは体重以外の問題として冷え、むくみ、便秘、生理不順、貧血などを伴っています。
防風通聖散は下剤で攻めて、熱を冷ます方向に働く薬剤ですので、冷え性の女性は内服することでかえって体調が悪化する場合があります。
単純に攻め下すのではなく、足りないものを補いつつ、余剰を排出するという工夫が必要です。当帰芍薬散、防己黄耆湯、葛根湯などは体を温めたり、むくみを改善し、生理不順を整える効果もあるので女性の診察には重宝します。体を温めることで軟便剤、下剤の効果もあがります。
貧血の改善も減量には重要となりますが、漢方で胃腸を整えることで鉄剤の副作用の胃もたれや便秘の予防にもなります。温補剤で補いつつ、利水剤、駆お血剤、攻下剤などでデトックスを行います。
また薬剤以上に食養生、睡眠が大切ですので、この点についても指導をします。きれいに健康的に減量することが目標です。