銀杏の効能について ~「そぶえイチョウ黄葉まつり」に行ってきました~
「そぶえイチョウ黄葉まつり」に行ってきました。
「そぶえイチョウ黄葉まつり」に行ってきました。赤い名鉄電車に揺られて最寄りの山崎駅に着くと、想像以上に一面が真っ黄色でした。そしてあの強烈な匂いに否応がなしに秋の深まりを感じさせられました。稲沢市祖父江町は銀杏の生産量が日本一で、町には1万本ものイチョウの木が植えられているそうです。
祖父江のイチョウ畑にはきれいに整備されたイチョウ並木とは異なる生活感のある迫力がありました。農家の庭の古木を見学したり、銀杏の収穫のためのネットが木の下に張ってあるのを見たりできて色々発見がありました。またぎんなんパークではゴムで飛ばす紙飛行機が体験できて子供達も楽しんでいました。
東洋医学では
東洋医学では肺は五行の金に属し、季節は秋、色は白、感情は悲しみを司るとされています。何となく物悲しい秋に旬を迎える銀杏は中国ではその殻の色から白果と呼ばれ、漢方的には肺に作用し、収斂作用があるとされています。収斂作用とは体から大切なものが漏れ出すのを止める作用のことです。
咳を止める効能があり、定喘湯という処方には銀杏が配合されるようです。処方内容は咳、喘息に使用される五虎湯に銀杏を加えたような内容です。おしっこやおりものを止める作用もあり、頻尿、夜尿症や白色帯下にも有効とされています。
また最近ではイチョウの葉の薬効が西洋でよく研究されており、血流を改善して認知症を予防するともいわれています。
どんな人に最適?
さて銀杏はどんな人に最適でしょうか。やはり髪の毛に白い物が混じり、年齢的にも人生の秋に到達した、酸いも甘いも噛みしめてきた中高年に最適でしょう。
銀杏の郷愁を誘う滋味は子供には早いと思います。あちこちが緩んできて、おしっこが漏れたり、ため息が漏れたり、物を忘れたりするのを銀杏の収斂作用が引き締めてくれるかもしれませんよ。
東洋医学では植物の形から効能を想像することがあります。樹齢を経たイチョウには乳根という瘤ができます。読んで字の如くおっぱいの形の瘤です。そのため母乳の出をよくする効能があるという言い伝えがあり、各地で信仰されています。
乳根の実物はおばあちゃんのおっぱいみたいな形で、オスのイチョウの木にもできるそうなのですが・・・。ただし銀杏には小毒性もあるので、妊婦、授乳婦、小児は目で楽しんで、食べるのは控えめが良いと思います。
イチョウの語源
最後にイチョウの語源、別名について。皆さんはイチョウの葉っぱの形を見て何を連想しますか。昔の中国の人は鴨の水掻きを連想しました。そしてイチョウのことを鴨脚樹と呼びました。なかなか洒落ていますよね。鴨脚の発音がヤーチャオで、これが日本で変化してイチョウになったという説が今のところ有力とされているようです。
またイチョウは別名、公孫樹とも呼ばれます。種を植えてから実がなるのに孫の代まで時間がかかるからこの呼び名が付いたとされています。しかし東洋医学を学ぶものは公孫と聞くと黄帝を連想します。黄帝とは中国の伝説上の帝王で、東洋医学の始祖ともされています。
黄帝の名を冠した医学書の「黄帝内経」は現代でも東洋医学の聖典として読み継がれています。この黄帝の姓が公孫なのです。(ちなみにユンケル黄帝液の名前もここからきています。)
歴代の皇帝には五行説に基づいたイメージカラーがありますが、黄帝の色は読んで字の如く黄色です。イチョウのきれいな黄葉を見て、黄色の徳を持つ黄帝にあやかって公孫樹と名付けたのかなと想像してみたりします。
おまけ
このコラムをお祭りでお土産に買った銀杏とお酒を楽しみながら書きました。お酒はプリンセスギンコ(内藤醸造)というイチョウ花酵母を使った日本酒です。色はイチョウを思わせる淡い黄色で、酸味が強い甘口のお酒です。
しかし後味に銀杏由来なのかほのかな苦みがあり、味を引き締めていて、大人っぽさのある華やかな印象のお酒でした。アルコール度数10度と低目ですが、しっかりとした味わいで美味しかったです。祖父江の銀杏を食べながら、記憶と知識をぎゅっと収斂してこのコラムを記載しました。