漢方の香りと味わいを楽しむ夏の信州駒ヶ根旅行記 養命酒・カッパ・鯉のうま煮を堪能
家族旅行で信州駒ヶ根を訪れました。思いがけず漢方に関連した旅行となったので、ちょっとした夏の思い出話を。
養命酒 駒ヶ根工場
江戸時代からのロングセラー、養命酒の工場が駒ヶ根にあります。
褐色の甘苦い養命酒をお猪口でコクリと飲むと、体にポッと灯がともり元気になった感じがします。
もう1、2杯行きたいところですが、薬として飲むにはお猪口1杯が適量なのでしょう。
お酒には体を温め、気血を巡らす効能があります。そのため八味地黄丸や当帰芍薬散などの、冷え性で虚弱な人に適応する漢方薬はお酒で内服すると効果が良いと言われます。
養命酒にはクロモジが配合されています。クロモジは漢方薬としてはあまり使用されませんが、健胃作用があり皮膚にも良いとのこと。
また香りが良いため高級楊枝に加工されたりアロマオイルとして使われています。
養命酒ではこの香りのよいクロモジを使ったジン(香の森、香の雫)を作っています。ジンはもともと薬酒としての歴史があり、薬酒の大手養命酒が手がけるのも頷けます。
飲んだ感想としてはジン特有の薬臭さは控えめで香りは爽やかで華やか、味は柔らかくほんのり甘い余韻が残ります。
ラベルにも繊細なクロモジがあしらわれ、何となく女性的な印象を受けるジンです。
硬水と針葉樹でドライな海外と、軟水と広葉樹でウエットな日本の気候の違いも味わいに関係があるのでしょうか。
ちなみに漢方薬は軟水の方が成分が抽出しやすいのだとか。香の雫を口に含むと、工場見学で訪れた中央アルプスの森、敷地内の小川などが鮮やかに思い起こされます。
カッパの妙薬
天竜川にはかつてカッパが住んでおり、カッパから教わった加減湯という薬が伝わっていました。
リュウマチなどの関節炎の薬で黄檗(オウバク、キハダ)が主薬であった様です。オウバクは苦味のある胃腸薬で、日本では山伏が各地にその薬効を伝えたとされています。
御嶽山を挟んで長野の百草丸、岐阜の下呂膏のどちらもオウバクを主薬としています。
百草丸はオウバクの他にセンブリやゲンノショウコといった有名な民間薬が配合されており、苦味が二日酔いや胃炎、下痢に良く効きます。カッパ由来の薬は全国にあり、カッパが相撲好きなことから傷薬が多い様です。
天竜川沿いのおもしろかっぱ館ではカッパの妙薬の紙芝居やイラストでのんびりカッパと触れ合えます。
前述のジンとカッパの好物のキュウリはどちらも爽やかな香りで相性が良い様です。海外にはキュウリで香り付けしたジンもあるそうです。
キュウリをつまみに香の雫を飲み、時々頭の中の駒ヶ根高原でカッパと戯れています。
鯉のうま煮
夕食には豪華な鯉のうま煮が登場しました。
鯉は古来より薬効が高く評価されており、漢方では利尿、利胆作用があり、産後の乳汁不足には特に有効とされています。
薬効のみならず、味も良く、信州名物の鯉のうま煮は絶品です。
甘辛の濃い口で、普段はそれほど魚好きでもない我が家の子供もがっつくほど。しかし身肉は子供に食べ尽くされても悔しくありません。
大人の楽しみはなんと言っても、ぎゅっと旨みが濃縮した肝と、ゼラチン質でねっとりしたウロコ。これで地酒がいくらでもいけます。
某有名グルメ漫画でもウロコが大事と言っていたなと、納得しながら杯を重ねました。鯉の薬効のおかげか翌日は二日酔いもなくすっきりでした。
鯉は縁起の良い魚でもあります。鯉の滝登りは立身出世の象徴ですし、中国では鯉魚と利余(利益が有り余る)の発音が同じことから縁起物とされているそうです。
春、冬が旬とされますが夏でも美味。土用丑の日の「う」のつく食べ物は鯉の「う」ま煮も良いなと思いました。
夏の星座
夏の星座には医学に関連したものがいくつかあります。一番有名なのはへびつかい座のアスクレピオスでしょうか。
伝説ではアスクレピオスは名医で死者をも蘇らせることが出来たとか。
しかし死者を助けすぎたために冥界の王ハデスの怒りをかい、ゼウスの雷に打たれて殺されたといわれます。
蛇が巻き付いた杖はアスクレピオスの杖と呼ばれ医療関係のシンボルとして有名です。WHOのシンボルマークや救急車のロゴなどにも描かれています。
名医アスクレピオスのお師匠さんがケンタウルス族の賢者ケイローンでこれは射手座。
そして、射手座の弓の辺りには南斗六星が含まれています。中国の昔話では北斗は死、南斗は生を司るとか。
北斗、南斗といえば北斗の拳、ケンシロウの世界ですね。原作者の武論尊先生は長野県佐久市の出身で、今年は40周年イベントがあるとのこと。
そういえば私がツボに興味を持ったのも経絡秘孔が発端だったような・・・。
駒ヶ根高原の星空はとてもキレイでした。しかし星がたくさん見えすぎて逆にどれがどれだかわからなくなってしまい、勉強不足が悔やまれました。
わからないけれどキレイなのでしつこく眺めていたら流れ星が何個か見えました。
後から調べてみるとペルセウス座流星群の時期に当たっていたようです。流れ星には漢方診療の上達を願っておきました。
「好きこそ物の上手なれ」の精神で何でも漢方に結びつけて楽しくやっています。
今回は挑戦出来ませんでしたが、信州は昆虫食の本場でもあります。
以前のコラムで昆虫について少し勉強したので、イナゴ、ザザ虫、蚕のさなぎ、蜂の子など、ぜひ次回はチャレンジしてみようと思います。