夏の多汗症に悩む方必見!漢方外来で効果的な治療法と処方を紹介
夏が近づくと、漢方外来に汗に関する相談が増えます。
漢方薬でピタリと汗が止まることは少ないですが、「滝の様な汗は出なくなった。」「汗で髪が濡れなくなった。」「汗がさらっとして匂いが減った。」などの良いお返事をいただくことは少なくありません。
以下によく使う処方を列挙してみます。
浮腫み
浮腫みがちの人には、黄耆、桂皮、麻黄などで皮膚表面の機能を高めて汗を調節し、皮下の水はけを良くする処方を使います。
防已黄耆湯、五苓散、越婢加朮湯などがあります。水分代謝が良くなるため、むくみ、関節痛、お天気頭痛、めまいなどの水の異常による症状の改善も期待できます。
防已黄耆湯と五苓散はどちらかというと女性(虚証)向けで、防已黄耆湯は下半身、五苓散は上半身に作用しやすいとされています。
越婢加朮湯は男性(実証)向けで熱がこもって、湿疹を伴う様な汗に使われます。
滝のような汗かき
滝の様に汗が出て、暑い暑いとハンカチで顔を拭うような人には、熱を冷ます石膏と知母の入った白虎加人参湯が有効です。
白虎加人参湯は熱中症にも使用されます。
手汗
手汗は交感神経の興奮が関与するため、交感神経の緊張を抑える柴胡(さいこ)が含まれた四逆散などが使用されます。
また牡蠣(ボレイ:カキの貝殻)にはストレスを抑える効能に加え、止汗作用があるとされています。
牡蠣を含む処方の柴胡桂皮乾姜湯なども使用されます。
手汗とは少し異なりますが、手足が熱く夜眠れないという訴えも時々あります。
手足の火照りに対しては三物黄芩湯や六味丸も使用されます。
ホットフラッシュ
更年期のホットフラッシュの発汗には加味逍遙散、桂枝茯苓丸、女神散、温清飲などが使用されます。
更年期の漢方ついてはまた別コラムでまとめようと思います。
肥満症
肥満症で体内に熱がこもり、脂っこい臭いのきつい汗をかく場合には防風通聖散などのデトックスの処方が有効です。
病後や虚弱者
病後や虚弱者のじっとりとした汗、夜間の盗汗には、人参、黄耆、五味子、麦門冬などの生薬で気力体力を補う補中益気湯、清暑益気湯、滋陰降火湯などが使用されます。
これらは夏バテ予防にも使用されます。
多汗を伴う周辺症状に使用できる漢方薬を思いつくままに挙げてみました。使える薬は多いですが、使いこなすにはそれなりに経験と知識が必要です。
夏向きの飲み物は
夏向きの飲み物もよく相談されるので記載しておきます。
カフェインは交感神経を興奮させるため、ノンカフェインの方がよいでしょう。
はと麦茶(ヨクイニン)やトウモロコシのひげ茶は利水作用があるので、浮腫みやすく汗をかきやすい人には有効だと思います。
酸味には止汗作用があるとされています。中国では酸梅湯(さんめいたん)という烏梅(ウバイ:梅の燻製)、山査子、ハイビスカス、氷砂糖などを用いた甘酸っぱい梅ドリンクが夏バテ予防の飲み物として有名です。
また韓国では五味子茶(オミジャ茶)という赤い色の酸味のあるお茶が夏に良く飲まれるそうです。五味子は酸味のある生薬で汗を止めたり、咳を止める効能があります。
漢方薬では、夏バテに使う清暑益気湯や咳止めに使う小青竜湯に配合されています。小青竜湯が酸っぱいのは五味子の味です。
ルイボスティー
ルイボスティーはどうですか?と最近良く聞かれます。
アフリカ原産のため、漢方的な効能は私の持っている教科書に記載されていません。
南国原産の食べ物には熱を冷ます作用があることが多く、味は少し酸味があり、ノンカフェインなので汗をかきやすい夏向きなのかなと個人的には想像しています。
この方面に詳しい方がみえましたら教えて下さい。
多汗を伴う周辺症状の漢方治療に興味がありましたらご相談下さい。
外用薬との併用
もちろん原発性腋窩多汗症に対するエクロックゲル、ラピフォートワイプや最近使用できるようになった原発性手掌多汗症に対するアポハイドローションなどの外用薬との併用も可能です。
かのわたコラム「夏バテ・熱中症の漢方」も併せて読まれると参考になると思います。