君が代と五音音階:入学式での新たなスタートと音楽の力
「君が代」と五音音階、音楽療法
子供の入学式で「君が代」を歌いました。
格調高い歌詞と独特な調子が好きです。
「君が代は千代に八千代に
さざれ石の巌となりて苔のむすまで」
入学式にちなんで子供を中心に置いて意訳をしてみます。
「君たちの良い時代がいつまでも末永く続きますように。
君はまだ小石だけれど、自分の努力と仲間との協力で大きな岩となり、
年月を経て苔むすように、色々な経験をして味のあるかっこいい大人になってほしい。」
子供たちに良い時代を引き継げる様に大人も頑張らなければいけないと改めて思いました。
石と苔の入った英語のことわざに “a rolling stone gathers no moss” というのがあります。
「転石苔むさず」と訳されます。イギリス式では人に惑わされ軽挙妄動する人は大成できないという意味で、アメリカ式では古臭くなる前に柔軟に動くべきという意味にとらえるそうです。
どちらも正しいと思いますが、国民性が出ていて面白いですね。
日本では従来はイギリス式で解釈をしてきましたが、現在ではアメリカ式の解釈に親近感を持つ人も多いのかもしれません。
五音音階
「君が代」の独特な調子は五音音階によるとされます。
中国、日本は何でも五行を中心にしており、音楽も西洋式ではドレミファソラシの7音なのに対して、中国、日本ではドレミソラの五音で成り立っていました。
五音を漢字で表し、五臓に配当すると、ドは宮(きゅう)で脾、レは商(しょう)で肺、ミは 角(かく)で肝、 ソは徴(ち)で心、ラは 羽(う)で腎に対応するとされています。
この方面は詳しくありませんが、音楽療法として応用されています。
「君が代」も五音を中心に構成されているそうです。
宮内省楽部の林廣守、奥好義が日本古来の旋律で作曲した曲に、海軍軍楽隊のドイツ人のフランツ. エッケルトが洋楽の和声をつけたとされています。
フランツ・エッケルトは晩年を韓国で過ごし、墓地もソウルにあります。
音楽療法
養生訓を記した貝原益軒は音楽にも造詣が深く、養生に音楽を取り入れていたようです。
養生の基本は楽しむこと。
音楽は楽しい物。
歌って踊る事は心を和ませ、気血の巡りを良くする。
子供に音楽を習わせるのは良い事。
等の記述があります。
音楽、薬の漢字の成り立ち
「音楽」、「薬」の漢字に含まれる「楽」の字について、白川静『常用字解』では以下のように説明しています。
「象形。柄のある手鈴の形。白の部分が鈴、その左右の幺は糸飾り。
もと舞楽のときにこれを振って神をたのしませるのに使用した。
また病気のとき、シャーマンがこれを振って病魔を祓ったので、病気を治すことを[疒+樂](=療)という。」
「楽」は神様にお祈りする時に使う手鈴の象形で、その音色から音楽の意味や楽しませる意味となり、病魔を払うことから治療、薬の意味も派生したようです。
音楽と薬は心身を安楽にし、祓い清める鈴の意味を内包しているのですね。
五音不全とは
音痴のことを中国語では五音不全というようです。
私は五音不全で、カラオケは苦手ですが、このコラムを執筆して、養生のためにちょっと練習してみようかなと思いました。
書いた人
岐阜市 加納渡辺病院
外科専門医・漢方専門医 渡邊学