
医の旧字『醫』に隠された治療の本質とは?漢字から読み解く医療の起源
「醫」の漢字の成り立ち
〜 漢字から読み解く古代の医療 〜
「医」の古い字に「醫」の字があります。
醫の字の成り立ちは「医」「殳」「酉」の3つのパーツに分けて、以下の様に説明される事が多いです。
医は外科切開に使った鏃(やじり)の入った箱、殳は手術器具あるいは徒手療法、酉は薬酒を意味するという説や、
医は病魔退散の祈祷に使う呪矢を隠した場所で、殳はそれを打つ音であるという説などが有名です。
今回のコラムでは「醫」を匸、矢、殳、酉の4つのパーツに分けて、
私なりの解釈を記載してみようと思います。
■ 矢
矢 + 疒 = 疾
疒(やまいだれ)は病人がベッドで寝ている様子を表します。
古代は戦争で矢傷を負うことがありました。
矢傷を負って、病に倒れてベッドに伏している様子を表すのが「疾」の字です。
■ 殳
殳は「ほこがまえ」と呼ばれ、杖で物を叩く動作を表します。
役の字は労役、兵役、苦役などの言葉がある様に、人を叩いて働かせる意味です。
役 + 疒 = 疫
労役、苦役で疲れ果てて、病に倒れてベッドに伏している様子が「疫」の字です。
疾病、疫病の言葉があるように、矢傷などの外傷、労役による疲労が病(やまい)の主要な原因でした。矢と殳は病気に関連の深い漢字なのだと思います。
■ 殹
殹 は古い書物には「病気で苦しむうめき声」と説明されています。
殹 = 匸 + 矢 + 殳
匸を「かくしがまえ」と言い、物事を覆い隠す意味があります。殹は矢と殳を匸で覆い隠しているわけです。
これは矢傷を負った病人、労役で倒れた病人、つまり疾病、疫病で苦しむ人々を覆い隠すシェルター、救護所のイメージではないでしょうか。
殹 :救護所では病気に苦しむうめき声があふれていたことが想像できます。
どうです? 殹 の字が病気(疾、疫)で苦しむ人を保護する
救護所、病院(匸)に見えませんか?
■ 醫 と 毉
医の古い字に「醫」と「毉」があります。殹 は先ほど説明した様に病院を表すと考えます。
醫 の字の酉は酒の意味です。古代は薬酒を用いて病気を治療しました。
毉 の字の巫は加持祈祷の意味です。古代はお祈りも重要な治療手段でした。
疾病(矢)、疫病(殳)を救護、防護(匸)する病院が殹であり、
薬酒(酉)、祈祷(巫)で治療することを表したのが醫や毉なのだと思います。
上記が私の解釈です。割と説得力があると思いますがいかがでしょうか。
■ 最後に
醫の簡字体として医が使用されますが、医の字の本来の意味は弓矢を入れた袋や箱を表し、「醫(病気の治療)」の意味はなかったようです。
ここから先は根拠が乏しいですが、医の字に関して妄想をしてみます。醫においては「矢」が外傷、疾病で「匸」が救護所ではないかと前述しました。
しかし「医」の字においては、「匸」は病魔に対する盾であり、「矢」は病魔に立ち向かう武器であると想像してみます。
盾としては未病に対する予防医学や感染症に対する公衆衛生学、矢としては外科、内科、スピリチュアルケアなどの多彩な治療法を当てはめることが可能だと思います。
こう考えると、本来は醫術とは無関係であった医の字が、病気治療の醫を表すシンプルながらも最適な字に見えます。
醫と医の字の成り立ちについて私なりの解釈と想像を記載してみました。
疾病(矢)、疫病(殳)を救護、防護(匸)して薬酒(酉)、祈祷(巫)で治療するのが醫、毉であると解釈します。
醫から独立した医においては「匸」は病魔に対する盾であり、「矢」は病魔に立ち向かう武器であると想像してみるのも楽しいです。

