クリスマスの魔法? バッチフラワーと漢方で心と体を癒やそう
クリスマスとバッチフラワーと漢方
名古屋駅に大きなクリスマスツリーがディスプレイされていました。今回のコラムではクリスマスに関連したバッチフラワーと漢方の知恵を皆さんにプレゼントしようと思います。
(注:私は漢方の専門家ですが、精神科医ではないので、その分は割引いてご一読ください。)
スターオブベツレヘムと神田橋処方
クリスマスツリーのてっぺんの星の名前をご存じでしょうか?スターオブベツレヘムと呼ばれます。キリストの誕生を三賢人に知らせ導いた星です。スターオブベツレヘムの名前を冠した花があります。六芒星を思わせる白い凛とした花で、バッチフラワーでは「過去にショックを受けたり、何かつらい目に遭ったりして、それを引きずっている人」に適応するとされます。
私がスターオブベツレヘムを知ったきっかけは精神科医の神田橋條治先生の著書でした。神田橋先生は副作用の少ない治療法を模索する中で、漢方やバッチフラワーに出会われ、積極的に使用されています。
先生はPTSDのフラッシュバックに対してスターオブベツレヘムを勧めておられます。外傷体験自体はきれいに過去のものにはならないが、外傷体験を思い出したときの迫力、思い出したときの本人の心が揺れる程度が軽くなると仰っています。
神田橋先生はフラッシュバックに対して漢方薬の桂皮加芍薬湯+四物湯が有効であることを発見されたことでも有名です。このコンビネーションは先生の名前を冠して神田橋処方と呼ばれています。効果がある場合は内服後1か月程度でフラッシュバックの頻度が減ってくるそうです。
神田橋処方発見の経緯は「神田橋條治 精神科講義」に詳しいです。神田橋先生自身もおっしゃっていますが、オカルト的で不思議です。好き嫌いがわかれると思いますが、面白いのでかいつまんで記載してみます。
神田橋先生にはフラッシュバックを有する患者の頭に邪気が見えるそうです。(馬蹄形の形で帯状回を透視しているのではないかと書かれています)そして、その邪気に対して漢方をかざして反応を見ていくと、桂皮加芍薬湯と四物湯で邪気が中和されることに気がつき、神田橋処方の発見に至ったとの事です。
処方の背景として、桂皮加芍薬湯は相見三郎先生がてんかんに有効と発表していたこと。四物湯はくたびれた脳に補剤が有効と考えて選択した様です。しかし最後の決め手は邪気の中和です。発見の経緯は怪しくても大切なのは結果だから、使ってみてください。と神田橋先生は仰っています。
神田橋先生には「経絡、ツボ療法」という著書もあります。普通の鍼灸の本かと思って読むと面喰らいます。先生には経絡、ツボが見えるそうです。そしてそのツボに対してイメージで作りだした気の針で治療するという、気功?の本です。独創的でロマンがあります。この本をヒントに私も経絡が見えるようになりたいと夢みています。(触診では何となくわかるので、いつか見えるようになると期待しています。)
おまけ:六芒星は古来より世界中で重要なシンボルとされます。
スターオブベツレヘムの花を眺めていたら、ふと鬼滅の刃の禰豆子の着物の柄を思い出しました。麻の葉文様といいます。麻は丈夫ですくすくと育つことから、子どもの成長を願って、産着などに用いられたそうです。禰豆子が鬼を克服したのはスターオブベツレヘムに似た麻の葉文様の助けもあったのかしらと思ったりします。
六芒星の籠目も有名です。魔除けの効能があるとされています。岐阜市のマンホールにこの模様がありました。鵜飼で使う竹籠の図案です。岐阜のマンホールは籠目でプロテクトされているのです。
ホリーと抑肝散
クリスマスリースに用いられるセイヨウヒイラギはホリーと呼ばれます。ホリーはバッチフラワーでは愛と憎しみに関連します。他者への憎しみや怒りの感情をホリーの聖なる愛が浄化してくれるとされます。憎しみの連鎖を断ち切るには愛が必要であることを気づかせてくれるレメディーと言えます。
このような怒りや痛みの状態に漢方薬では抑肝散が適応となります。抑肝散の怒りは抑圧されており、怒りを本人が自覚していないこともあるので怒りの有無の問診が大事になります。「劇的、漢方薬シリーズ」の著者、益田総子先生は抑肝散は虐げられた人々に有効と記載しています。
漢方に加えてバッチフラワーや「気」の治療について記載された書籍に三都ブレインクリニック、永久保茂樹先生の「「証」を超えた漢方治療をめざして フォトタッチメソッドによる「気」の医学への招待」という本があります。
フォトタッチメソッドとは患者に漢方方剤の写真を触ってもらって、そのときの患者の“反応”でその漢方の適否を判断する方法と書かれています。理屈では到達できない効能への発見があり、面白い本です。
この本で先生は、抑肝散を使用する患者にはバッチフラワーレメディーではウイロウ、ホリー、ビーチなどが反応する。軽い怒りなら漢方で対応できるが、奥にこびりついている怒りの時にはフラワーレメディーを併用していると記載されています。
パインと苓桂朮甘湯、苓姜朮甘湯
クリスマスツリーは日本ではもみの木が使われますが、海外では松の木も使用されるようです。
松の木を英語でパインと言います。冬に耐える常緑の木であることがポイントです。パインはバッチフラワーでは自分を責めてあれこれクヨクヨ後悔してしまう人、いつも謝ってばかりいる人が自分を許せるようになる効果があるとされます。
松に関連した生薬に茯苓があります。茯苓は松の根っこにできるキノコでサルノコシカケの仲間です。松の精が濃縮したものと考えられ、昔は伏霊と記載されていたそうです。胃腸を丈夫にし、浮腫みをとる効能があり、六君子湯、五苓散を始めとしたメジャーな胃薬、利尿の漢方に頻用されます。
また茯苓の松の根に近い中心部分は茯神とよばれ、精神安定作用があるとされます。茯苓を主薬とした処方に苓桂朮甘湯があります。奔豚気という突き上げるような動悸に有効とされ、めまいやパニック発作、小児の起立性低血圧などに使用されます。
苓姜朮甘湯という冷え症に効く処方もあります。水の中に座っているように足が冷える場合に有効とされます。加味帰脾湯や酸棗仁湯などの安神薬にも茯苓が配合されます。
茯苓は胃腸が弱く、冷え浮腫みがあり、精神的にやや弱くドキドキ、クヨクヨしやすい人に適応となるようです。バッチフラワーのパインの「自分を責めてしまう人」に通じるものがある気がします。
最後に
クリスマスに関連したバッチフラワーと漢方のコラムを記載しました。聖なる夜にちなんで少し神秘的な内容にしてみました。クリスマスツリーを眺めることで、つらい思い出が和らぎ(スターオブベツレヘム)、憎しみを愛に変え(ホリー)、自分を肯定できる(パイン)よう願いを込めてこのコラムを書きました
書いた人
岐阜市・加納渡辺病院
外科専門医・漢方専門医 渡邊学