薬膳と養生で骨粗鬆症予防!東洋医学における腎の役割
その① 薬膳、養生
東洋医学では骨は腎が司るとされており、骨粗鬆症の予防には腎の強化が重要となります。
東洋医学の腎は西洋医学の腎臓よりも守備範囲が広く、腎臓、膀胱に加えて、成長、生殖、老化の一連のライフサイクルや、臓器としては骨、歯、髪、脳、耳などにも関連するとされています。
病気で言うと子供の夜尿症や成長発達の遅れ、男女の不妊症、老化に伴う様々なトラブル、例えば排尿障害、腰痛、骨粗鬆症、歯槽膿漏、薄毛、耳鳴り、難聴、認知症などに腎が関連すると考えられています。
腎に関連するキーワードとしては黒色、水(潤い)、冬(寒)、鹹味(塩味)、恐れ、などが挙げられます。
薬膳
腎を養い骨を強くする食材をいくつか挙げてみます。
海藻や魚介類などの海産物は水、鹹味(塩味)に関連し、腎を養う食材とされています。
昔からわかめが髪に良いと言われています。髪は腎の司る所であり、黒くて鹹味のあるわかめなどの海藻類が腎を養うため、髪にも良いと考えられたわけです。
腎を補う海藻類のなかでもヒジキには特にカルシウムが多く含まれています。
またビタミンDはカルシウムの吸収に大切で、椎茸などのキノコ類に多く含まれます。そのためヒジキと干し椎茸のコンビネーションは骨粗鬆症予防におすすめです。
魚介類の中では海老もよいです。長寿の縁起物とされているのは伊達ではないのでしょう。
骨粗鬆症対策としては殻ごと食べられる干しエビが良いと思います。干しエビやジャコなどの小魚を活用してカルシウムを補給しましょう。
黒い食べ物も腎に良いと考えられています。黒豆は色が黒で、形が腎臓に似ているので腎に良いとされています。
黒ごまも長寿食として有名です。ポリフェノール、セサミン、ビタミンEなどを含み血流改善、老化防止、白髪予防などに有効です。
加齢に伴い潤いや元気がなくなるため、栄養価が高く潤いを与える効能のあるナッツやドライフルーツもおすすめです。
ナッツの中では特にクルミがおすすめです。クルミは形が脳みそに似ているため、脳に働きかけて老化予防、認知機能改善に良いとされています。毎日2,3個食べると良い様です。
ドライフルーツではレーズンがおすすめです。ブドウには体を潤す作用があり、ブドウ糖は吸収が良く元気の源にもなります。
その他には杏仁豆腐の飾りに使われる枸杞(くこ)の実も滋養強壮作用が高いとされています。目に良く食べる目薬とも言われていますし、その根は地骨皮(じこっぴ)と呼ばれ補腎の生薬として利用されています。
カルシウムの補給、潤いを与える効能としては牛乳も有用ですが、日本人は吸収があまり良くありません。乳酸菌発酵したヨーグルトの方が吸収効率が良くおすすめです。
前述のドライフルーツや蜂蜜などをトッピングするとより良いでしょう。便秘がちの人には便通を良くする作用もあり良いと思いますが、元々太りぎみでコレステロールが高い人は控えめが良いでしょう。
骨粗鬆症の予防にはカルシウムの他にタンパク質も大切です。
なぜなら骨の隙間を埋めて強度を保つのはタンパク質なのです。そのためタンパク質の豊富な肉類も活用するとよいと思いますが、加齢とともに胃腸の吸収力が低下するのも事実です。
豪華なステーキはかえって胃を痛めることに成り得ます。肉類の中では鶏肉が比較的胃に優しく消化しやすいのでおすすめです。肉類は自分の胃の強さを考慮して食べましょう。
タンパク質の中では大豆タンパクはあっさりしており、胃腸が弱い方でも取り入れやすいと思います。
大豆に含まれるイソフラボンは骨代謝に良いエストロゲン様の働きをするため栄養食品にもなっています。
豆腐は消化が良く、潤いを与える作用があります。
納豆は血流改善効果や便通を整える効能があり、カルシウムを骨に取り込む働きを助けるビタミンKを含むためおすすめです。
タンパク源として卵もおすすめです。
昨今の値上がりが辛い所ですが、卵には栄養素がバランス良く配合されており完全食とされています。以前はコレステロール値が上がると敬遠されていましたが1日1-2個であれば問題ないと思います。
また鶏卵よりウズラの卵がさらに栄養価が高いとされています。筋力や骨の強度を高めて、その効能は高麗人参に例えられるほどです。愛知県豊橋市がウズラの産地です。もっと地元のウズラを評価してもよいと思います。
野菜の中では体を温める作用のあるニラが腎を補います。前述の卵とあわせたニラ玉は元気が出ると思います。
その他には粘りはスタミナに通じるとされ、山芋が有名です。山芋は山薬(さんやく)と言う名前で漢方薬にも使用されており、八味地黄丸に配合されています。
その他には蓮根も粘り気があり潤いを与える効能があるとされています。その実は蓮子と呼ばれて腎を補う作用があるとされ、高齢者の排尿障害などに適応のある清心蓮子飲という漢方薬に配合されています。
腎は冷えると機能が低下します。冷たいものや生ものはあまり取り過ぎない方が良いでしょう。
飲み物としては体を冷やす緑茶や胃にさわるコーヒーよりは、ほうじ茶や紅茶などの茶色いお茶が胃に優しく体を暖める作用がありおすすめです。また杜仲茶は筋骨を強くする作用があるとされています。
養生
恐怖の感情が腎を損なうとされています。びっくりして腰を抜かすという慣用句はこの考えから派生しています。
またマリーアントワネットが処刑の恐怖で一夜にして白髪になったという逸話も有名です。腎を守り老化しないためには過度な不安、心配をしない心構えや生活習慣が大切です。
また過労や冷えも腎精を損なうとされているので無理は禁物です。散歩などの適度な運動をして、日光に当たることは体を鍛えて気分転換になり、気血を巡らせ陽気を養うために有効です。
若さを保つには潤い(陰分)の補充も大切です。陰分は夜に補充されるため、適度な睡眠が大切です。
また花を愛でたり、音楽を聴いてリラックスすることは心の潤い、養分として大切です。若者や異性とのふれあいも大切です。
少し極端な例ですが、中国では若さを保つために健康な男児のおしっこを集めて若返りの薬を作ったそうですし、異性とのセックスで若さを保つ房中術も研究されたようです。しかしセックスに関しては無理をして逆に命を縮める人が多いのも事実ですが・・・。若さをもらうつもりで、子供を抱いたり、若者や異性と適度に交流しましょう。
骨粗鬆症に関連して腎を補う食事、養生について記載しました。
骨粗鬆症が心配な方は当院にて骨密度検査をされてはいかがでしょうか?
次のコラムには骨粗鬆症の漢方薬とツボを紹介しようと思います。